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第2回研究会―開催概要

2014年度 「越境社会」研究会―第2回開催概要 日時:2014年6月21日(土)午後2時45分~6時 場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎423教室 http://www.keio.ac.jp/ja/access/mita.html (「6」番の建物の2階です) 予定: 報告① 稲津秀樹さん(慶應義塾大学法学部訪問研究員) 「移動を管理する技法――国境と向き合う日常の軌跡から」 報告要旨 本報告の目的は、グローバル化の進展と人の移動に伴い、多民族化・多文化化する社会に帰属する感覚を奪う権力とその日常的管理の技法を、身近な生活世界のフィールドワークを通じて批判的に捉えなおすことにある。ここでのフィールドとは、報告者自身が時空間を過ごしてきた都市的環境である神戸とその周辺地域での日常における出会いから立ち上がる問題領域を指している。その文脈にしたがえば、多民族/多文化化する「日本社会」の現実は、特に1995年の阪神・淡路大震災以降、多くの論者や議論によって提起されてきた。だが、自省も込めて言えば、この状況を捉える上での社会学のコトバも、方法論的ナショナリズムとの結び付きを断ちにくいがために、個別のエスニシティ/ネイションを対象とした研究は蓄積されても、多民族化・多文化化する時空間に内在した領域横断的かつ経験的な社会記述や、それに基づいた批判的想像力が積極的かつ充分に展開されてきたとは言い難いのではなかろうか。越境する社会に国境を構築する空間の管理者として振舞う以外の方法で、「差異の最適化」(前回の塩原報告を参照)に抗するヒントを私たちはどこから/どのようにして見出すことができるだろうか。以上の問題関心に導かれながら、本報告では、神戸周辺地域における国境と向き合う人びとのフィールドの日常を、東北アジアにおける人の移動の流れと渦の中での出会いの軌跡(trajectories)の諸事例として捉えなおしていく。それにより「移動を管理する技法」における「日本人性」の時空間を再度、批判的に考えなおす場所の契機とそれが示唆するところについて、報告者の博士論文の一部内容の再解釈を行いつつ試論的に提起してみたい。   報告② 栢木清吾さん(神戸大学国際文化学研究科メディア文化研究センター) 「デッキ下から仰ぎ見る日系移民史――19世紀末から20世紀初頭における商船海員の『脱船』現象を手がかりに」 報告要旨 19世紀末葉から20世紀初頭までの時期、北米大陸に向かった日本人移民の先駆者たちの中には、船舶が北米諸港に碇泊中に密入国を果たした商船海員が相当数存在した。たとえば、記録に残るかぎり最初にカナダに上陸した日本人移民として知られる永野万蔵は、印度航路を航行する石炭運搬船の海員として働いた経歴を持つ。そして1877年に永野がカナダに入国するのは、ウェンストミンスター港に着岸した船舶から抜け出したためであった。また移民一世の歴史経験を収集・編纂した伊藤一男の『北米百年桜』シリーズには、脱船経験者から聞き取った体験談が多数収録されている。さらに同時期に書かれた海事関係の公文書や、船長や高級海員として実際の海運業務に従事した人びとが後年著した回想録には、下級海員による脱船の頻発とその取締の関するエピソードが散見される。こうした「脱船」に関する記録の集積が浮き彫りにしているのは、異国の地での再出発を目指して汽船に搭乗した「移民」たちと、その汽船運航のための労働に従事していた「海員」たちの経験の重なり合い、そして両者のカテゴリーの相互浸透性である。本報告の目的は、移民史、海事史、労働者階級史など複数の研究領域を横断しながら、脱船/移民の経験を歴史的かつ理論的に検討することである。いわばデッキの下から移民史を見返すことで、従来の日系移民史の枠組では充分に捉え切れていなかった移民の移動性と多様性の有り様を開示できればと考えている。 研究会の報告はこちら

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